スイス滞在丸5年経過しました。
スイス5年というと永住権が取れる取れないの噂を耳にするのですが、ネット上でも現実世界でもお役所に直接聞いても、人によっては取れるといったり、人によっては取れないと言われたり、完全に情報が錯綜してござるので、少し調べました。特別な人とか、お金持ちでもなくて、普通の人が普通にとる永住許可について。
調査の結果、情報が錯綜するのも無理もなくて、5年でとれる永住権の条件は、主に
- 自身の国籍
- 配偶者の国籍
- 仕事の契約
- 住んでいるカントン
- 語学力
- 日ごろの行い
- 特別な人かどうか
- そして、担当者
によることが判明。English Forumなどで飛び交う様々な外国人による情報も、これだけバリアブルがあったら情報錯綜するのもわかります。しかも、確かな情報を見つけようとすると、どうしてもディープなドイツ語の世界に入ってしまうので外国人にはやはり難易度の高い世界に。しかしながら、公式の情報を見ない限り確かなことはいえないので読みやすい公式の情報を探してみるのであれば、以下の2点がおすすめできます。
- 外国人法 (連邦法) / Federal Act on Foreign Nationals / Bundesgesetz über die Ausländerinnen und Ausländer
- 永住許可 (チューリッヒ) / Permanent residence permit / Niederlassungsbewilligung
1の外国人法はスイス政府のもの。英語。僕も5年目にして始めて読みましたが、スイスに住むなら一度読んでおいてもいいかも。
2はチューリッヒの永住許可についてのガイドライン。ドイツ語。1の外国人法をもとに各カントンが業務レベルに落としこんだもののチューリッヒ版。なので、果たしてこのガイドラインがジュネーブで通じるかという質問には、「どちらも外国人法に基づいているのでだいたい一緒だろうけどジュネーブのガイドラインを直接確認すべき」というのがきっと正しい答え。実際後述の語学の証明の、ドイツ語orフランス語はもちろん、必要とされるレベルはカントンによって異なるとか。
外国人法によると、日本人に一般的でメジャーな滞在許可証の種別は以下の通り。
- 短期滞在許可 (Art 32)
- いわゆるLパーミット
- 1年以内の滞在用
- 2年まで更新可能
- カントンをまたいでの引っ越しは申請が必要(Art )
- 条件を満たしたうえで、転職は許可が必要 (Art 38)
- 条件を満たしたうえで、起業は許可が必要 (Art 38)
- 日本人配偶者もLがもらえる(Art 45)が、配偶者の就業は不可能 (Art 46)
- 日本人保有者は122人(Q3/2017時点, 移民局統計)
- 滞在許可 (Art 33)
- いわゆるBパーミット
- 1年以上の滞在用
- 更新可能
- カントンをまたいでの引っ越しは、就業していれば可能
- 条件を満たせば、転職は基本的に可能 (Art 38)
- 条件を満たせば、起業は許可が必要 (Art 38)
- 同居する日本人配偶者はBがもらえる(Art 44)、配偶者の就業も可能(Art 46)
- 日本人保有者は2577人(Q3/2017時点, 移民局統計)
- 永住許可 (Art 34)
- いわゆるCパーミット
- 1年以上の滞在用
- 無期限で更新可能
- カントンをまたいでの引っ越しは、無職でも可能
- ほぼ無条件で転職が可能 (Art 38)
- ほぼ無条件で起業が可能 (Art 38)
- 同居する日本人配偶者はBがもらえる(Art 43)、配偶者の就業も可能(Art 46)
- 日本人保有者は2439人(Q3/2017時点, 移民局統計)
LとBは新規発行数の数がカントンごとに割り当てられており(Art 20)、外国人への新規発行は
- スイス国民及びC保有者に適切な候補者がいないことを証明できた場合 (Art 21)
- 給与が見合う、マネージャー、スペシャリスト、Qualified workersの場合 (Art 23)
- 投資家、起業家、特別な人, エグゼクティブなどの場合 (Art 23)
のみ行われる。とあるが、現実問題でスイス側が最初の要件のAを否定することってほぼ不可能で、同僚やスイスに残ったIMDの同級生なんかを見てみると、会社がオファーを出せばビザはほぼ降りると考えて間違いはない。要するにスイスはビザが降りにくいなんて話を聞くが、ビザどうこうよりオファーどうこうと思っている(個人的な見解)ただし、HRは手続きしないといけないので、小さい会社のHRはめんどくさがるかもしれないので、外国人へのオファーに多少の影響があるのは否定できない。
ここで本題の、配偶者がスイス人もしくは永住権を持った外国人でない日本人に永住許可が与えられる条件は、外国人法によると:
- 累計で最低10年スイス内に滞在して、かつ、過去5年間連続してスイス国内に滞在していたこと (Art 34.2a)
- 日頃の行いがいいこと (悪いことはしていない) (Art 34.2b)
- ただし!アプリカントが”Successfully integrated”であれば、過去5年の連続した滞在で永住許可が与えられる(Art 34.4)
ちなみに、配偶者がスイス人や永住権を持った外国人の場合は、5年で永住許可が降りる (Art 42.3)
最後の「ただし」の部分が今回重要で、要するに日本人であれば、10年スイスにいる、もしくは5年在住で”Successfully integrated”であれば基本的に永住許可が認められる。
ここまで、最初に照会した連邦政府の外国人法によるもの。さらに詳しい要件を調べようと思うと、今度はカントンごとの規定を参照する必要があるわけです。今回はスイス最大でよく参照されるチューリッヒのガイドラインを見てみる。関係ありそうなパートをざっくり抜粋すると、日本人の永住権の申請は以下の場合で可能。
方法A. スイス人もしくは永住権を持った外国人と結婚している日本人 (Ch.3) 、
- 過去5年連続してスイス内に滞在したこと
- 無犯罪証明
- 過去3年間に社会保障(Sozialhilfebezug)を受けていないことの証明
- 過去3年間にブラックリスト(Betriebungsregister)されていないことの証明
方法B. スイス人及び永住権を持っていない外国人と結婚していない普通の成人の日本人が在スイス10年で永住許可を取ろうとした場合 (Ch.4)
スイス人もしくは永住権を持った外国人と結婚していない普通の日本人の通常の永住権取得方法。
- 累計10年、直近5年連続でスイス内に滞在したこと
- 無犯罪証明
- 過去3年間に社会保障(Sozialhilfebezug)を受けていないことの証明
- 過去3年間にブラックリスト(Betriebungsregister)されていないことの証明
- 実際の雇用契約、給与明細
- ドイツ語検定A2(Telc, Goethe他)
方法C. スイス人及び永住権を持っていない外国人と結婚していない普通の成人の日本人が、5年で永住許可を取ろうとした場合 (Ch.5 Vorzeitige Erteilung der Niederlassungsbewilligung auf Grund erfolgreicher Integration)
方法Bの特例で、最低5年の滞在で永住権を取得する方法。スイス社会にきちんと溶け込めたことが証明できることの証明。この場合の、「溶け込めたこと」の実質的な証明は、納めるもの納めたかと、語学力によるもの。
- 直近5年連続でスイス内に滞在したこと
- 過去3年間にブラックリスト(Betriebungsregister)されていないことの証明
- 無犯罪証明
- 滞在中に社会保障(Sozialhilfebezug)を受けていないことの証明
- 過去5年間雇用されていたことの証明
- ドイツ語検定B1(Telc, Goethe他)
- 永住許可を申請しない配偶者の2,3,4及びドイツ語検定A2(Telc, Goethe他)
スイス滞在5年で、永住権を申請しようと思うと、Cの方法、つまり、普通に働いていてドイツ語検定さえあれば、申請できるわけです。と、いうわけで、12月の1年おきのBパーミットの更新の際に、追加で永住権の審査をお願いすると、無事に永住権が届きました。どうしても永住権が必要というわけでもないけれど、もらえるものなら・・・と思い申請。却下されたら却下されたでいいかなーと思っていたけれど、いざもらえるとちょっと嬉しい永住権。
もうすぐ5年目の更新を迎えようとする人/5年以上10年未満の人が永住権を申請しようとすると、以下のステップになると思います。申請に弁護士を使う人もいるようですが、申請だけなら弁護士を使う必要はないと思われる。
- 認定された(Telc, Goethe他)語学の検定を取得する(カントンによってまちまちなので要確認)
- 必要な書類を集める(無犯罪証明、社会保障、ブラックリストはだいたいオンラインで申請可能)
- Bパーミットの有効期限が切れる3か月前より後に、もしくは更新のお知らせが来たら、永住権が欲しいことを伝えて滞在許可の更新を申請する(通常の更新費用より20フランくらい余分に払う)
- カントンから必要な書類のリストが来るので、決められた2週間?とかの期限内に送る。(もしくは先読みして更新の申請の際に前もって持っていく)
- カントンでの許可、ベルンに審査がまわりベルンでOKが出たら永住許可のカードが送られてくる。却下された場合は、その旨書類で送られてくる。
ちなみに、夫婦は審査は別々。ちなみに、同じ外国人でも、EUの指定された国、ヨーロッパの指定された国、カナダ、アメリカ国籍の人はCの方法を使わずとも基本的に5年で永住権が申請できる(8.1、8.2)。オンラインで情報を集めると情報がごちゃごちゃになる理由です。また、どこにも書かれていないけれど、Bパーミットでも条件付きのBパーミットがあるようで、その場合上述の方法では却下されるとか(ネットで読んだだけの情報)。またスイス社会に溶け込めた証明は主に言語力によるものだが、場合によっては日ごろのスイス人との交わりの証明も要求されるとか(ネットで読んだだけの情報)
そして、なぜかカントンを引っ越すと滞在年数がリセットされるという噂があるようですが、どこにもそんなことは書いていないし、僕のように5年間で3カントン住んでいても永住許可が降りているので、根も葉もないうわさのよう(個人的な意見)
と、いうのが2017年12月時点での、永住権の申請だけのために最近移民法を読んだだけの僕の個人的な解釈でした。
現在Bパーミットの日本人保有者が2577人(うち女性1610人(62%))。
仮に2577人の3分の1がスイス人の配偶者だとして、残り1700人。
そのうち5年未満に帰国の予定の駐在とか留学の人が半数いるとしたら、残り850人。
ざっくり子供たち、働いていない人を除くと、5年で早期申請する条件を満たした日本人には500人もいないでしょう。そんなニッチな話でした。